
感染症は現代医療が直面する最も困難な課題の一つである。従来の病原体検出手法では特定できない未知の病原体により、患者が適切な治療を受けられずに重篤な状態に陥るケースが後を絶たない。しかし、こうした状況に革命をもたらす可能性を秘めた技術が台湾から生まれている。
2020年に設立されたAsia Pathogenomics(亜洲準訳、以下、APGと略す)は、メタゲノミクス次世代シーケンシング(mNGS)技術を用いて包括的で迅速な病原体検出サービスを提供する台湾拠点の企業だ。同社のCEO Roger Liu(劉君豪)氏は、次世代シーケンシング(NGS)業界で17年の経験を持つベテラン起業家である。
APGは台湾で唯一のTFDA(台湾食品薬品局)認証を取得した臨床mNGS検査サービスとして、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫を含む27,000以上の病原体を24〜48時間以内に検出する革新的な技術を確立している。
2025年には日本への本格参入を開始し、国内医療機関との連携を進めるAPG。同社の技術と戦略、そして日本市場での展望について詳しく見ていこう。
17年の研究が生み出した革新技術

写真左がCEO Roger Liu(劉君豪)氏
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APG CEOのRoger Liu氏が感染症病原体検出分野に参入した背景には、NGS技術の劇的なコスト削減がある。Liu氏の技術への情熱は2008年に始まり、17年間にわたって業界の変革を目の当たりにしてきた。
2001年に最初のヒトゲノム解析が完了した際、そのコストは30億米ドルで、20ヶ国以上の協力が必要でした。しかし現在では、個人のゲノム解析は数百米ドルで可能になっています。(Liu氏)
この技術コスト革命により、研究段階だった技術が臨床応用可能となった。シーケンシング技術の価格は2008年から2020年にかけて劇的に下がり、価格は当時の1万分の1になったという。
Liu氏のキャリアは段階的に構築された。2008年から2014年まで既存企業で経験を積み、IPO(株式公開)まで経験した。その後2012年に最初のスタートアップBioTools(圖爾思生物科技)を設立。同社は台湾の約2,000の研究室にサービスを提供し、台湾のマイクロバイオーム研究者の70〜80%がBioToolsにアウトソーシングサービスを依頼するまでに成長した。
BioToolsでの成功により、Liu氏は重要な気づきを得た。当初のビジョンはマイクロバイオームを管理することで人間の健康を管理することだったが、腸内マイクロバイオーム分野では研究段階にとどまり、明確な臨床応用の痛点を見つけることができなかった。
転機となったのは2014年の学術論文だった。mNGSの最初の研究論文が発表され、Liu氏は2016年にこの技術の可能性を理解した。当時はシーケンシング価格が高すぎて臨床応用は困難だったが、技術の潜在能力は明らかだった。
そして2019年、ソフトバンクが同分野のアメリカ企業Karius(mNGS病原体検出サービスを提供)に投資したことで、Liu氏は市場タイミングの到来を確信した。価格低下とVC投資の活発化により、臨床応用の時期が到来したのだ。
従来の病原体検出手法は「仮説ベース」アプローチを採用している。医師が症状から推測した特定の病原体を対象とした検査を実施するため、未知の病原体や予想外の病原体を見逃すリスクが高い。APGのmNGS技術は、この根本的な限界を解決する「仮説フリー」アプローチを採用している。
従来の病院での検出技術は仮説に基づいています。NGS技術では、仮説なしに未知の病原体を検出します。すべての病原体を一度にシーケンスできるのです。(Liu氏)
従来のテストでは一度に10種類未満の病原体しかテストできないため、医師は病原体を「推測」する必要があった。しかし現在APGのデータベースには30,000以上の病原体が登録されており、包括的な検出が可能となっている。
この技術革新により、従来医師が経験と推測に頼っていた病原体特定プロセスが、包括的なデータ分析に置き換わる。患者にとっては、より迅速で正確な診断を受けられることを意味し、医師にとっては診断の確実性が飛躍的に向上することになる。
APGは2024年に台湾食品薬品局からLDTS(Laboratory Developed Tests and Services)認証を取得した。これは台湾で初めて、そして唯一の臨床mNGS検査サービスとしてのTFDA認証である。Liu氏によると、LDTSは技術が非常に先進的であることを意味する。認定されたラボが必要だが、手法はそのラボによって発明され、プロトコルは政府によって承認される仕組みだ。
この認証はアメリカの規制に由来し、日本でも今年から議論が始まっている。APGの認証取得は、同社の技術が最高水準の品質と信頼性を備えていることを示している。
台湾で87%の医療センターが導入

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APGは台湾で驚異的な市場浸透を達成している。Liu氏によると、台湾の医療センターの87%が同社の技術を導入しており、台湾医学会からのガイドライン支持も得ている。この成功の背景には、台湾独特の医療保険制度と、Liu氏が長年培ってきた人脈とノウハウがある。
台湾の医療保険制度は日本と大きく異なる特徴を持つ。人口の60%が自己負担医療保険に加入しており、このような先進的な診断検査もカバーされる。これは日本の国民皆保険制度とは対照的で、台湾では民間の医療保険が重要な役割を果たしている。
台湾政府のデータによると、年間約900万人が感染症に罹患し、そのうち約40万人が重篤化して入院する。さらにその10%にあたる約4万人が生命に関わる重篤な状態となる。
この技術を使用しなければ、年間1,000〜2,000人の患者が死亡する可能性があります。我々は年間1,000-2,000人の命を救うことができると確信しています。(Liu氏)
APGの成功は、技術力だけでなく戦略的な市場アプローチにもある。同社は3年間にわたって複数の臨床試験を実施し、技術の有効性を実証した。この臨床実績により、APGは台湾の主要医療機関との契約を獲得した。
同社の技術は敗血症のような緊急性の高い感染症において特に価値を発揮する。がんや出生前診断とは異なり、感染症は非常に時間的制約があり、敗血症の場合、患者は1時間か2時間で死亡する可能性がある。そのため時間が極めて重要となる。
台湾は地理的に小さいため、APGは全土をカバーする物流網を自社で構築できた。どこからでも2〜3時間以内にサンプルをラボに収集でき、この迅速な物流体制がmNGS技術の時間的優位性を最大限に活用することを可能にしている。
APGの成功は、親会社であるTCI Gene(大江基因)との戦略的連携によっても支えられている。TCI Geneは1998年に設立されたTCI(大江生醫)の子会社で、精密医療分野における包括的なソリューションを提供している。TCIは台湾証券取引所に上場する大手バイオテクノロジー企業で、62ヶ国に製品を展開し、ESG経営でも高い評価を得ている。
TCI Geneの親会社であるTCIは、統合バイオサイエンスデザイン(IBD)というコンセプトを採用し、化学、生物学、工学、遺伝医学、美学、人間工学、応用材料科学、消費者行動研究など多分野の専門知識を統合している。この多角的なアプローチがAPGの技術開発と事業展開を支えている。
2024年にはAPGとIllumina Taiwanが感染症分野におけるmNGSの応用に関する覚書を締結し、技術的な連携も強化している。IlluminaはNGS市場で圧倒的なシェアを持つグローバルリーダーであり、この提携はAPGの技術的優位性を示す重要な指標となっている。
Liu氏は台湾での成功要因について、市場と技術と保険制度と規制を本当に理解していることが持続可能性の鍵だと分析している。この台湾での確固たる基盤が、日本市場進出への自信となっている。
日本市場参入に向け、厚労省との対話に着手

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APGの日本市場参入は2024年から本格化した。参入のきっかけは、Liu氏が日本市場の調査を行ったことだった。当初は台湾市場のみに焦点を当てていたが、日本でこのような技術を提供する企業があるかどうかを調査することになった。
日本市場の魅力は、まずその規模にある。人口比から推計すると、日本市場は台湾市場の5-10倍の規模を持つと見込まれている。さらに重要だったのは競合状況の調査結果だった。医学会や機器会社、流通チャネルとの6〜8ヶ月にわたる調査により、日本でこの技術を提供している他の会社がないことが判明した。
この市場調査により、Liu氏は日本参入の確信を得た。APGは東京都からの補助金も獲得し、日本子会社を設立している。
しかし、参入には複雑な規制への対応が必要だ。APGは2025年6月に日本の規制当局との初回面談を実施した。コンサルタント会社、アドバイザー、そして長崎大学高度感染症研究センター長の森内浩幸氏(現在、日本小児感染症学会理事長で、日本感染症学会の次期会長に内定しているとされる)とともに厚生労働省と話し合いを行った。
この面談で、日本での承認プロセスの複雑さが明らかになった。
厚生労働省から、まず適応症を確認する必要があると言われました。肺炎、おそらく敗血症など、何かに焦点を当てる必要があります。(Liu氏)
具体的には、日本で毎年何人の敗血症患者が発生するかを明確にし、従来の血液培養やPCR検査と比較して、mNGS技術がどのような利益をもたらすかを示す必要がある。政府がそれらの検査にどのように支払い、コストと結果がどうなのかを含めた包括的な分析が求められている。
規制承認から保険償還(政府や保険組合が医療費を払い戻すこと)まで、Liu氏は最低3〜4年は必要と見積もっている。その間、APGは段階的なアプローチを計画している。先進医療制度の取得やSaMD(Software as a Medical Device、プログラム医療機器)としての申請など、複数の経路を検討している。
物流面では、日本の地理的特性を考慮した戦略的配置が重要となる。台湾では2-3時間以内にサンプルを回収できるが、日本の広大な地理的範囲では複数の拠点が不可欠となる。東京、大阪、徳島、そしておそらく北海道など、いくつかの場所にラボが必要になると Liu氏は分析している。
このため、APGは大手臨床検査会社との連携を重視している。最も重要なパートナーとして、診断会社や大きながんセンターとの協業を挙げている。具体的には、SRL、BML、LSIといった診断業界のトップ3企業との連携を計画している。
彼らは物流を持っているので、我々は彼らと協業した方が良いと考えています。(Liu氏)
国際連携についても積極的だ。今月(2025年8月)には日本の国立健康危機管理研究機構(JIHS)を訪問する予定で、サードパーティーのコンサルティング会社とも話をしており、国民健康保険への到達にどのくらい時間が必要かを理解しようとしている。JIHSとの連携により、台湾と日本の国際共同臨床試験の可能性も探っている。
競合環境と技術的優位性

mNGS病原体検出市場において、APGの競合相手は技術プラットフォーム提供企業ではなく、同様のサービスを提供する検査会社である。Liu氏はIlluminaやOxford Nanoporeを機器メーカーと明確に区別している。これらの企業はシーケンサー会社であり、APGの競合他社ではなく協力者だと位置づけている。つまり、機器提供者であって検査サービス提供者ではないということだ。
Vision Research ReportsやGrand View Researchによると、日本のNGS市場は2024年から2033年まで年平均成長率23.60%で成長し、2033年には24億7,880万米ドルに達すると予測されている。この成長の背景には、個別化医療の普及とゲノム薬理学の発展がある。
APGの技術的優位性は、シーケンシング技術そのものではなく、アルゴリズムとデータベースにある。
シーケンシング技術は、我々にとってプラットフォームに過ぎません。コア価値はアルゴリズムとデータベースです。(Liu氏)
この戦略的思考により、APGは複数のシーケンサーメーカーと連携している。Liu氏は以前のスタートアップBioToolsでの経験を活かし、Illumina、Oxford Nanopore、PacBioなど、さまざまな会社からのシーケンサーを使用している。シーケンシングは毎年改善されるため、特定の技術に依存せず、アルゴリズムとデータベースにこそ特許と知的財産の価値があると考えている。
実際、APGのシステムには生成AI技術も組み込まれている。アルゴリズムにはAIシステムが統合されており、特定の病原体が検出された際に、関連する学術論文を読み込んで医師に情報を提供する。これにより、稀な病原体であっても医師が論文を調べる必要がなくなる。
ただし、現在のAI技術には限界もある。現在のアルゴリズムとデータベースはすべてプライベートなため、ChatGPTのような汎用AIでは対応できない。NCBI(米国国立生物工学情報センター)のようなオープンソースデータベースには偽データが多すぎるため、正確な学習ができない問題がある。
APGは独自のプライベートデータベースを構築することで、この問題を解決している。データの品質管理を徹底することで、正確な診断結果を提供できる体制を整えている。
日本市場における競合分析について、Liu氏は綿密な調査を実施した。SusHi Tech Tokyoに参加して日本の技術状況を理解した結果、日本で同様の技術を提供している企業がないことを確認した。
さらに、主要な機器メーカーとの関係も調査済みだ。日本のユーザーの80%から90%がIlluminaをシーケンサーとして使用しているため、Illumina Japanを訪問して情報収集を行った。その結果、日本で同様の技術を提供する他のプロバイダーは存在しないことが確認された。
この包括的な市場調査により、APGは日本市場における独自のポジションを確認している。技術プラットフォームではなく、付加価値の高いサービスプロバイダーとしての差別化戦略が、日本市場でも有効であることを確信している。
Liu氏の見解では、日本は細胞療法において世界で最高レベルの技術を持っている。日本の医療分野では製薬業界が最大の分野を占めており、精密医療では細胞療法(免疫療法)が最大の領域となっている。しかし、ゲノミクス分野にはあまりリソースが投入されていないため、APGにとって大きな市場機会となっている。
ICU滞在期間短縮が生み出す価値

APGの技術は単なる診断ツールを超えて、患者の治療結果と医療経済に大きなインパクトをもたらす。同社が最近完了した臨床試験では、重篤な肺炎患者における治療効果が実証された。
集中治療室(ICU)で重篤な肺炎を患う患者に対するmNGS検査の臨床試験が終了し、現在結果を待っている状況だ。この検査により、患者は数日早くICUを離れることができると予想されている。なぜなら、病原体を早期に特定できるため、医師は迅速に正しい治療を行うことができるからだ。
この治療効果は医療経済にも大きな影響を与える。2023年に公開された研究データによると、患者が5日早くICUを離れることができることが示されており、APGは台湾で同様の効果を検証している。
台湾での経済効果について、Liu氏は具体的な数字を示している。
台湾では、政府がICUに1日1,000米ドルを支払う必要があります。もし患者が5日早くICUを離れることができるなら、我々は政府のために5,000米ドルを節約できることを意味します。(Liu氏)
さらに重要なのは患者の予後改善だ。
実際、生存率は約25%増加するので、患者にとって有益なだけでなく、政府にとっても有益です。それは実際にwin-winです。(Liu氏)
世界の感染症診断市場は2024年に452億4,000万米ドルに達し、2029年まで年平均成長率3.48%で成長し、536億8,000万米ドルに達すると予測されている(Research and Markets)。この成長は、感染症の有病率上昇、ポイントオブケア検査への移行、研究開発活動の活発化によって推進されている。
特にNGSなどの画期的な技術の開発により、疾病検出のための迅速診断が進化しており、APGのような企業にとって大きな市場機会となっている。
APGの技術は、従来の推測に基づく診断から証拠に基づく精密診断への転換を促進する。従来のテストでは医師が病原体を「推測」する必要があったが、mNGS技術により包括的な検出が可能となった。
この診断精度の向上は、抗生物質の適正使用にもつながる。不必要な広域抗生物質の使用を避け、特定の病原体に対する標的治療を可能にすることで、薬剤耐性の問題にも対処できる。また、早期の適切な治療により、合併症のリスクも大幅に軽減される。
日本での経済効果についても、Liu氏は楽観的な見通しを示している。APGは台湾でのデータを待ちながら、日本でも同様の臨床試験を実施し、政府の医療費削減に貢献できるかどうかを検証する予定だ。すべての患者がこの検査を受けることで、患者と政府の双方にとってwin-winの関係を築けると考えている。
創業の初志を貫く成長戦略

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APGの野心的な成長計画は、2026年第4四半期のIPO(株式公開)を目標としている。APGの台湾本社が2026年第4四半期にIPOを予定しており、これまでの技術開発と市場拡大の成果を投資家に示す重要な節目となる。
日本市場での事業展開は段階的に進められている。APGは2025年の5月に東京の子会社を設立しており、現在は現地チームの設立を進めている。9月までに日本で地元業務を行うためのローカルチームを構築する予定だ。
東京にローカルラボの設立も計画中で、現地で臨床試験を実施して日本の規制要件に対応する方針だ。これにより、サンプル収集から結果報告までの時間を大幅に短縮し、日本の医療機関により迅速なサービスを提供できるようになる。
長期的な展望として、APGは日本の感染症診断分野における大きな市場ポテンシャルを見込んでいる。
我々の分析によると、日本では感染症検出に対する市場需要が年間約20万人に達する可能性があります。これは我々の先進的な病原体検出技術を通じて診断能力と患者予後を改善する大きな機会を表しています。(Liu氏)
APGの事業哲学は単純明快だ。これはLiu氏の創業2度目の会社であり、創業の初志は医師が患者の病原体を特定することを支援することにある。従来この技術は存在しなかったが、現在では実現可能となった。現在1,000以上の論文が発表されているが、規制上の理由で日本では実用化されていない状況だ。
APGは感染症検査診断の権威である、長崎大学の柳原克紀教授と緊密に連携している。長崎大学は日本の感染症研究における重要な拠点だ。2025年8月25日には同社のウェブサイトでコンサルタントや協力者の情報を公開し、医師が患者の問題を解決することを支援していく予定だ。
収益性と社会的インパクトのバランスについて、Liu氏は現実的な視点を持っている。日本でのビジネス展開は重要だが、医師と協力して患者を救うことが同社のコアな目的だと考えている。
APGの将来戦略は、地理的拡大よりも技術的深化と市場浸透に重点を置いている。Liu氏は戦略的な市場選択について、mNGS技術はニッチ市場の一種だと説明する。ニッチ市場を選択する理由は、がん検査のような巨大市場ではロシュのような大企業との競争が困難だからだ。
この戦略的思考により、APGは持続可能な成長を目指している。当初は台湾市場だけで十分な規模だと考えていたが、日本市場の調査により新たな機会を発見した。
日本は世界第3位の経済大国であるため、当初は他の企業が同様の技術を提供していると予想していた。しかし調査の結果、そうではないことが判明した。これは大きな機会であり、台湾と日本の両市場で事業を展開できれば、より大きな力を持つことになる。
台湾と日本の両市場での成功により、APGは他の国や他の応用分野に進出する基盤を築くことができる。より大きな事業規模を実現し、技術のさらなる発展と普及を目指している。
この段階的アプローチにより、APGは技術的な完成度を高めながら、市場での地位を確立していく計画だ。当初は小さくて美しい会社を作りたいと考えていたが、日本進出の機会を得たことで、非常に迅速に行動している。日本市場は同社にとって今や非常に重要な存在となっている。
Asia Pathogenomicsは、17年間の技術開発経験と台湾での圧倒的な成功実績を基盤として、日本市場への本格参入を開始している。同社のmNGS技術は、従来の仮説ベースの病原体検出から仮説フリーの包括的検出へのパラダイムシフトを実現し、年間数千人の命を救う可能性を秘めている。
日本市場参入には規制対応と現地パートナーシップの構築という課題があるものの、同社の技術的優位性と戦略的アプローチにより、これらの課題を克服できる可能性は高い。特に、医療経済効果と患者予後改善の両方を実現できる点は、日本の医療制度にとって大きな価値となるだろう。
2026年のIPOを控え、APGは次世代の感染症診断において重要な役割を果たすことが期待される。未知の病原体による感染症という人類共通の課題に対し、台湾発の革新的技術がどのような解決策を提供するのか、今後の展開が注目される。